ママにゃーのブログ

一型糖尿病の主婦の日記

12 治験参加のススメ

こんにちは、一型糖尿病の主婦、ママにゃーです。

さて、『治験参加のススメ』です。
ご存知の方も多いとは思いますが、
治験とは、>>
新しい医薬品を患者さんに使っていただくためには、
厚生労働省により、その薬の効果と、
好ましくない副作用などが確認されている必要があります。
そのために新しい薬の候補を患者さんに使っていただき、
『効果』と『副作用』などを
確認する試験の事を 『治験』 といいます。<<(治験実施計画書より)

誤解を恐れずに平たく言うと、新薬・人体実験ボランティア(一部ご褒美あり)です。

最近色々な議論のある『薬価』ではありますが、治験に参加してみると、
なぜ薬の値段が高くなるのか、少し理解できることもあります。

☆『新しい薬ができるまで』
多分、以下が、新薬誕生までの一般的な流れだと思います。

基礎研究

非臨床試験

治験①⇒治験②⇒治験③(ここのいずれかに参加です!)

国へ申請

薬の誕生

製造販売後臨床試験、以上。


丁寧!とにかく丁寧です。理系の人の仕事は、一味違うなぁ!と感心するばかりです。

幸せな事に、私は今まで、数回治験に参加させてもらった経験があります。
今回はその中でも、一番記憶に残っている
『ヒトインスリン粉末吸入剤』の治験参加経験について、シェアさせて下さい。

当時私は、二人目の子どもの育休中で、その年の12月に職場復帰を考えておりました。
そして職場復帰の1年前に、引っ越しを決めておりました。

以前は職場の直近に住んでいたので、ちょっと職場と距離を取りたかった、
という気持ちが大きかったです。
この選択が、その後の退職への道筋を作ったのでしょうか…。

それはさて置き、当時は真剣に復帰に向けて、娘の保育園もあちこち吟味し、
私立のアットホームな保育園を選びました。

長男は小学校3年生、新しい学校で夏休みを迎え、
生活全般に徐々に慣れた頃でした。

そんな嵐の前の静けさの中、定期診察の中で、
『治験やってみませんか?』とお声がかかったのです。

職場復帰後の、目の回るような待ったなしの日々を、
私はまだ予想できませんでした。

治験の期間中、診察・薬にかかるお金は免除され、交通費も頂ける、
というご褒美に目がくらみ、
また『治験ってなんだろう??』という好奇心に駆られ、
治験に参加することを決めました。

産休中はお給料が出るけれど、育休中は無給でした。
就職後初めて、自分のお小遣いが無い辛さを、痛感していたタイミングでした。

『はい!治験参加します!』とお返事すると、
次の診察で、治験コーディネーターさんに紹介されました。

治験コーディネーターさんとは、私の理解が正しければ、
資格は、たぶん薬剤師さんで、
所属は病院の職員だったり、製薬会社から派遣されていたり?と、
病院内では、ちょっとファジーな存在でした。

コーディネーターさんに、治験の目的、治験参加者のやるべきこと、
治験期間のスケジュールなどを教えてもらい、
治験薬の払い出しや、消毒綿やデータ記載のノートなど、
治験実施に係わる物品の管理も、コーディネーターさんが担当でした。

そして治験開始前の各種検査なども、担当医と一緒に、
色々とコーディネートしてくれました。

私は興味津々で、いつもと同じ病院の、いつもとは違う手続きをこなしていきました。
特に治験薬は『ヒトインスリン粉末吸入剤』!
なんと注射薬ではなかったのです!

今でこそインフルエンザ吸入薬、リレンザ・イナビルの名前も一般的なものになりましたが、
当時、吸入薬はまだまだ物珍しく、
『喘息の薬みたい…』としげしげと見とれておりました。

また外食時に、注射の度に席を外す事が面倒だった私は、
『吸入薬、素晴らしい!』と治験に前向きな態度で臨みました。

確かに前向きな態度で臨んだのですが、実際の治験は、容易くなかったです。

開始するまでは、治験と言っても、毎日ちゃんと血糖値を計測する、
それだけの事で、通常の生活と特に変わりはない、と思っていたのです。

ところが、私にとって治験は、予想外に負担感のあるものでした。
それまでの自分の通常の生活が、通常の患者さんより、適当であったせいでしょうか。

負担① 治験期間中、血糖値を計測し、記録する。
⇒すぐ記録しないで、貯めてしまうんですよね。夏休みの宿題のように。
 毎回、通院日の前日にバタバタと書き写していました。

負担② 処方された治験薬をきちんと服薬し、残った治験薬のケースも返却する。
⇒無意識のうちに、薬の蓋など、ごみ箱に捨ててしまっていたりしました。

そして、12月の仕事復帰以降、何が何だか分からない、とっ散らかった毎日が始まりました。
子どもの健康、学校や保育園の行事や必要物品の準備、に押されて、
完全に治験の優先順位は、ダダ下がりでした。

そして多分、年明けてすぐに、
コーディネーターさんに、治験参加の辞退を申し出ました。

コーディネーターさん、『今までの手間と時間を何だと思ってる!?』と、
内心穏やかではなかったハズです。

しかし、そこはプロ、
『分かりました、大丈夫です。いままでご協力ありがとうございました。』
『でも、治験期間はあと3か月もありません。』
『もし、今まで頑張ってきてくださった事が、勿体ないと思われたら、
続けて頂ければありがたく思います。』
と、いつにもまして冷静、穏やかな調子で仰って下さいました。

その時私は、コーディネーターさんの話を聞きながら
『あぁ、あと3か月だったんだ…』と思っていました。
目の前の事の対応に追われて、
この先の予定も頭に入っていなかったのです。

『そ、それだったら、続けます。』
一転、継続を決め、3か月後。
治験期間の終了後、伝えられたのは
吸入型インスリンの、開発中止のお知らせでした。

色々、あるものです。
確かに、私などがうかがい知ることの無い、色々な理由で、
きっと開発は中止されたのだと思います。

でも、治験に参加して、医療現場の一過程を垣間見ることができて、
ホントに面白かったです。
算数の頃から苦手だった、まるっきりの文系人間が
医療従事者の世界の、息吹を感じる事ができた『治験』


ママにゃー、治験参加、おススメします!